旅するチャイ屋、はじめます。
旅するチャイ屋、はじめます。
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チャイは飲み物ではなく文化
ニューデリーの宿で目を覚まし、早朝の列車に飛び乗る。目的地はハリドワール。
わたしの席にはすでに青年が座っている。「隣は妻だから僕の席と変わって欲しい」と言うので、彼の席、6人ボックス席の窓側に座る。
列車が発車した後、隣の車両から父と子供兄弟だと思う家族が来て、わたしの向かい側に座る。
わたしの隣には、次の駅でビジネスマン風の男性が2人座る。
列車内では、水や食事が配られ、食事の前と後にはチャイが飲める。自分で作る簡易タイプのもので、お湯が入ったポットとティーカップ、茶葉、砂糖、ミルクが手渡される。
皆が一斉にチャイを作り始め、それぞれに楽しんでいる。
向かいの席で弟が兄と父にチャイのお代わりをせがみ、父が自分の分のチャイを渡す。
兄は・・・渡さない。
わたしが兄でも渡さないだろうな、わたしもチャイが好きだから。
弟は父からのチャイに大喜びしている。
わたしの隣ではビジネスマンが黙々とチャイを作り、新聞を片手に飲んでいる。
以前、街でも思った。
うだるような暑い中、甘くて温かいチャイにたくさんの人が集っている。
食後にチャイ、仕事の合間にチャイ、仕事中にもチャイ、疲れたらチャイ、朝もチャイ、昼もチャイ、夜もチャイ、レストランでもチャイ、屋台でもチャイ、道端でチャイ、
老若男女みんなチャイ、いつでもどこでもチャイ、
インド人はチャイに集う。
チャイは日常の中に溶け込んで、彼らの日々の生活に小さな幸せを運んでいる。
インドにいると、本当に、心の底からそう思う。
偉大なチャイの存在にわたしはすっかり魅了されている。
微笑ましい家族とビジネスマンたちを眺めながら、「帰国したらチャイ屋をしよう」と心に決め込んだ。
旅するチャイ屋
単なる飲み物を売るのではなく、
「チャイ」というインドの文化を伝えたい。
「チャイ」という小さな幸せを届けたい。
人が群がるインドのチャイスタンドのように、みんなの集う場所になればいいな。
旅するチャイ屋は名前の通り、世界中どこへでも旅立ちます。
2018.04.04.
なり